移植外科 腎臓移植

腎移植について

腎臓移植は、末期腎不全で腎臓が機能しなくなった患者に他の人の腎臓を移植し、その人の腎臓として働くようにさせる医療で、現在のところ末期腎不全の唯一の根本的治療法といえるものです。移植が成功すれば腎臓は正常に機能し,免疫抑制剤を飲む以外は普通の人と同じように生活することができます。 腎臓移植を行うには腎臓が提供されることが前提です。提供者により生体腎移植と献腎移植(心停止下腎移植、脳死腎移植)とに分かれます。腎臓を提供する(あげる)側をドナー、腎移植を受ける(もらう)側をレシピエントと言います。

生体腎移植

親、子、兄弟などの血縁者、または配偶者から1つの腎臓の提供を受けて移植します。ドナーとレシピエントの手術は同時進行で行われます。腎臓も良い状態で移植されるので、移植された腎臓もすぐに働き始めるため、多くの場合翌日から透析の必要がなくなります。ドナー側も、十分に検査をして、腎臓を1つ提供しても大丈夫であるか確認してから手術を行います。術後は普通に生活を送ることができます。親子、兄弟間での移植の場合は腎臓の相性(組織適合性といいます)が良いため、拒絶反応が生じる割合は低いです。

日本移植学会の倫理指針では、生体移植では、親族からの提供に限るとされており、親族とは、6親等以内の血族、3親等以内の姻族と定義されています。

日本では献腎移植を受ける機会が非常に少ないため、確実に移植を受ける手段としては生体腎移植を選択するしかありません。しかし家族による腎臓提供は、あくまでも自発的な善意に基づくものであり、強制や圧力が働くことは避けなければなりません。一方、移植を受けた側にも、提供してくれた相手に負担をかけたという負い目の感情が生ずる場合があります。健康な人の体から腎臓を取り出すという特殊な医療ですから、よく考えて慎重に決断する必要があります。

生体腎移植では、移植を受ける人と、臓器を提供できる人の条件がよい組み合わせばかりとは限りません。しかし、腎臓移植の水準は近年非常に向上し、血液型不適合、高年齢など、従来は移植の障害となっていた要因もかなりの程度克服されるようになり、ドナー、レシピエントの幅が広がっています。

献腎移植

亡くなった方から善意で提供された腎臓の1つを移植します。おひとりのドナーから腎臓が2個とも提供されれば、ふたりの人が腎臓移植を受けることができます。摘出された腎臓は速やかに保存搬送され、待機しているレシピエントのもとへ届き、移植が行われます。生体腎移植と異なり、移植した腎臓が十分に働き出すまで数日から2週間程度かかり、一時的な透析が必要となることがあります。また一般的に生着率は生体腎移植と比べてやや低いと言われています。

献腎移植を希望される方は、事前に(社)日本臓器移植ネットワークに登録を行う必要があります。献腎移植は臓器移植法の下で(社)日本臓器移植ネットワークが厳密に管理しています。臓器の提供、移植をネットワークの枠外で個人的に行うことはできません。

献腎移植を希望する人は、移植を実施する病院を通じて(社)日本臓器移植ネットワークに登録し、移植の機会を待つことになります。臓器の提供があった場合、登録者の中から、血液型一致などの条件を満たした上で、主にHLA型(白血球の型、型が合っていると移植成績がよい)の適合度と、待機期間(ネットワークに登録してからの期間)の長さなどをポイント化し、ポイントの高い人が選ばれます。しかし、登録者が約12,000人いるのに対して、実際に行われている献腎移植は2019年では年間126件(脳死下腎移植を含む)と約1%にすぎません。臓器の提供があまりにも少ないので、残念ながら移植を希望しても長期間の待機を余儀なくされます。

生体腎移植と献腎移植の比較

生体腎移植と献腎移植の利点と欠点について以下の表にまとめました。

  生体腎移植 献腎移植
利 点 提供される腎臓の障害が少ない
移植した腎臓の生着率が高い
腎臓の提供者が現れるまでの待機の必要がない
移植の日程をあらかじめ決めることができる
十分な手術の準備ができる
心停止後もしくは脳死後に腎臓が取り出されるため提供者に負担がかからない
欠 点 健康な提供者が手術を受けなければならない
提供者も術前の検査及び術後の定期受診が必要である
腎臓の生着率が生体腎移植よりも低い
待機時間が長い
緊急手術となるため、手術の準備時間が制限される
移植直後から尿が出始めることは少ないため、しばらくの間は透析療法を続ける必要がある

適応基準

レシピエントの条件

  1. 末期腎不全の患者で、移植手術に耐えられる体力があること。
  2. 年齢についての制限はありませんが、高齢になるほど条件は悪くなるので、一般には70歳ぐらいまでが目安とされていますが、近年の移植成績の向上からドナーの適応年齢は上昇しています。
  3. 活動性の感染症あるいは進行性の悪性腫瘍がないこと。

ドナーの条件

  1. 健康であり腎機能に問題のないこと
  2. 年齢についての制限はありませんが、高齢になるほど条件は悪くなるので、一般には70歳ぐらいまでが目安とされます。
  3. 活動性の感染症あるいは進行性の悪性腫瘍がないこと。
  4. これまではドナー側にC型肝炎が認められる場合、移植は行われませんでしたが最近では、レシピエント側にもC型肝炎がある場合に移植が可能なこともあります。詳細は外来でご相談下さい。

その他

HLA型 献腎移植では適合度の高い組み合わせが選ばれますが、生体腎移植の場合は適合しなくても行われます。ただし、家族に提供希望者が複数いる場合は、血液型、HLA型の条件がよい人からの提供が有利となります。
ABO血液型 ドナーとレシピエントの血液型は、従来適合していることが条件でしたが、医療技術の進歩により不適合の場合でも移植が可能になっています。

レシピエントの経過

1. 待機中の準備、検査 レシピエント(候補)とドナー(候補)に当科外来を受診していただきます。その際透析を受けている病院からの紹介状を持参してください。医師やコーディネーターから移植について十分な説明を受けてから移植を行う意志を確認します。
移植手術を受けられることが決まると、全身状態のチェックを行います。また細菌やウィルス感染は移植手術後の経過に影響を及ぼす場合があり、耳鼻科、眼科、歯科等の感染性疾患は事前に可能な限り治療して頂きます。
2. 入院後から手術当日まで 手術予定日の1週間前に入院いただき、最終的な全身状態のチェックを行います(外来で施行できなかった場合、最終的なレシピエント-ドナー間の組織の適合性をリンパ球混合試験、リンパ球クロスマッチ(採血)等でチェックします)。手術前にレシピエント、ドナーの方、ご家族に対し、手術内容等について詳細に説明させていただいた後、腎臓移植を行うことになります。手術の所要時間は約4~5時間です。
3. 手術直後 手術後は先進治療病棟に入ります。全身状態の監視をしながら、移植された腎臓の働きを注意深く観察していきます。体は点滴、ドレーン(浸出液を体外に排液)、導尿チューブ、心電図モニターなどが繋がっていますが、どれも全身状態を知るために非常に重要なものです。術直後より覚醒されていますので会話することも可能です。
4. 術後翌日から退院まで 手術後2~3日は安静にし、点滴で栄養や水分を補給します。食事は、翌日から可能です。 同時に経口での免疫抑制剤やその他のお薬の服用が始まります。徐々に点滴やドレーン類を外していきます。経過は人によって異なりますが、退院は3~4週間後になります。
5. 術後3ヶ月から4ヶ月 退院してから、移植後3~4ヵ月までは、原則として自宅で療養し、1-2週間に1回程度通院していただきます。この時期は急性拒絶反応が起こりやすく、そのため免疫抑制薬の服用量も多く、肺炎などの感染症が起こりやすい時期です。規則正しい生活と服用を心がけましょう。
6. 術後4ヶ月以降 移植後3~4ヵ月を過ぎると、腎臓の機能も安定し、免疫抑制薬の服用量も減少し、免疫力も回復してきます。体調がよければ職場や学校の復帰も可能です。しかし慢性拒絶反応が起こる危険があり、感染症(尿路感染症、肺感染症など)から完全に免れたわけではありません。通院は月1-2回程度になりますが、引き続き、規則正しい生活と服用が望まれます。

ドナーの経過

1. 事前検査 レシピエントへの腎臓の提供を希望しドナー候補となられましたら、まずご自身に病気がないか、提供できる腎臓の状態であるか、提供することにより危険がないかなどの検査を当院外来で行っていただきます。
2. 入院後から手術当日まで 移植手術の数日前に入院いただきます。手術の準備を進め、術前にレシピエントの方、ご家族と共に手術内容等について詳細に説明させていただいた後、移植手術を行うこととなります。手術の所要時間は約3時間です。
3. 手術直後 手術後麻酔から覚醒後、病室に戻ります。点滴、ドレーン、導尿チューブ等がつながっています。術直後より覚醒されていますので会話することも可能です。
4. 手術翌日から退院まで 早期離床が血栓予防、腸閉塞予防に効果的であるため翌日から体動を促していきます。術翌日から食事を開始、点滴やドレーンも適時取り外していきます。大きな合併症なく血液検査も正常に戻り、体力も回復すると退院となります。平均入院期間は術後約10日間となります。
5. 退院後 退院後は1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月(1年目)に外来を受診していただき、採血検査により腎機能を調べます。その後は可能であれば1~2年に1回のペースで受診して下さい。

レシピエントの手術

腎臓移植の手術は、提供された腎臓を、本来の腎蔵の場所でなく、下腹部の右または左に移植します。これは安全に手術しやすく、膀胱に近く、皮膚の上から触れることができ、その後の管理がしやすいためです。移植された腎臓の動脈や静脈を自分の血管とつなぎ合わせ、尿管は膀胱とつなぎ合わせます。自分の腎臓はほとんどの場合はそのまま残します。しかし体の中で悪さをする場合には摘出しなければなりません。手術は約4~5時間で終わります。

生体腎移植の場合、ドナーの腎臓摘出と同時進行で行われるので、よい状態で移植する事ができます。そのため移植された腎臓がすぐに働き出すので、翌日から透析の必要がなくなる場合がほとんどです。

献腎移植の場合、手術自体は生体腎移植と同様ですが移植した腎臓が働き出すまでに数日から2週間程度かかり、一時的に透析が必要となることがあります。

ドナーの手術

腎臓は左右1個ずつ、計2個存在します。そのうちの1個を摘出し、レシピエントに提供する手術です。通常は機能のよいほうの腎臓をドナーに残します。

腹部斜切開による腹膜外腎摘出術

手術の切り口(切開創)は脇腹を斜めに30cmほど切るようになります。具体的に場所を示しますと、裏は脇の下から降ろした線と交わる位置から12番目の肋骨の下縁に沿って、斜めに下腹部まで皮膚を切開します(側腹部斜切開)。筋膜と筋肉を同じように切開し、後腹膜の脂肪組織に包まれた腎臓を、周囲から丁寧に剥離し、十分な長さの腎動脈、腎静脈そして尿管をつけて摘出します。手術の所要時間は3時間程度です。

小切開法による腹膜外腎摘出術

手術の切り口(切開創)は脇腹に10~15cmほど切るようになります。具体的には12番目の肋骨の端から前方(臍の方向)に切開します。筋膜と筋肉は同じように切開し、後腹膜の脂肪組織に包まれた腎臓を周囲から剥離し、十分な長さの腎動脈、腎静脈そして尿管をつけて摘出します。手術の所要時間は4時間程度です。

鏡視下腎臓摘出術

最近、普及しつつある術式です。摘出創が小さいため術後の疼痛がより少なく、早期の離床が期待できます。腹腔内を通り、腸を避けて摘出する「腹腔鏡下腎臓摘出術」と、直接後腹膜腔にいたって腎臓を摘出する「後腹膜鏡下腎臓摘出術」があります。手術の所要時間は、3~5時間程度です。

腎移植に伴う医療費

腎臓移植に関する医療費は健康保険の適応になります。患者様が支払うのは一定の割合の自己負担分のみです。その自己負担分も様々な助成制度がありますので、患者さんが負担する金額は少なくなります。

特定疾病療養受領

高額な治療を長期間継続して行う必要のある治療(人工透析)をうけている人は、「特定疾病療養受領証」を病院の窓口に提示すれば、毎月の自己負担額が少なくて済みます。 *但し、透析を実施している月に使用できる受給者証なので手術後、透析離脱後には使用できなくなります。

更生医療

更生医療は、一般医療により既に治癒(欠損治癒、変形治癒など不完全治癒)した障害者に対し、その日常生活能力、社会生活能力、職業生活能力を回復、もしくは獲得させることです。すなわち、更生医療は臨床症状が消退し永続するようになった「障害そのもの」を対象とし、疾病や外傷を対象とした一般医療とは異なります。
*更生医療の対象者は18才以上の身体障害者手帳を有するものです。
*入院前に申請しておく必要があります

ドナーの請求

ドナーの医療費はレシピエント側の保険でまかなわれます。しかし、検査を行い、医学的な事情などで移植が見送られた場合には、ドナー検査にかかった費用は自費でお支払い頂くことになります

退院後の通院・免疫抑制剤の費用

透析患者さんが腎移植を受けた後も、身体障害1級の資格は継続されます。従って、身体障害に対する更生医療、または重度身体障害医療費助成制度の対象となり、自己負担分はかなり軽減されます。

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